リビングの窓から庭の枯れ木に積もった雪を眺める。枝の分かれ目に残った雪から、ぽたぽたと雫が滴っている。あのくらいの高さからなら長年かけて石に穴をあけられそうだ。
昨日の夜、パパが「あか子、雪降ってるよ」と言って帰ってきて、あか子を抱っこして外に連れて行くと、きゃっきゃと嬉しそうな声が聞こえてきた。家の中に戻ってきた夫が「雪をつかまえてきたよ」と、あか子の小さな指に乗った雪を見せてくれた。かわいい指に大粒の牡丹雪が乗っていて、わたしがさわると解けてしまった。
今朝、あか子は窓に寄って「ゆき!ゆき!」と興奮気味。
「ふわふわ、見たい」
「お外寒いよ? すべるから危ないよ」
そんなふうにママは相変わらず炬燵から出たがらないが、あか子も「ねえ、起きてぇ。起きてよぉ」と腕を引っ張ったり、鞄を持ち出して「おしょと、いこ?」と誘ってみたりと一生懸命なので、震えながら着替えて、あか子にはピンクのジャンパーに帽子をかぶせて外に出た。
右側は駅の方に行く道。坂が多いし、真っ直線で同じ道を行って戻ってくるだけだからつまらない。左側はあんまり行ったことないけど、いつも車で行くスーパーに今日は歩いて行ってみることにした。
ざくざく靴音が鳴る。あか子はもちろん雪の残っている場所を好んで歩く。誰かが雪かきで集めた雪山に挑んだり、水浸しの雪でも氷の破片でも、珍しい物は何でも踏んで歩いた。
スーパーの駐車場には車が一台も止まっていなかった。敢えて裏手のこの駐車場に止めなくても、表にもあるし二階もあるし、第一ここに止めると駐車券が必要になるから面倒なのだ。
ガランとした駐車場の端っこに、まだ雪の層が残っていた。あか子の手を引いてそちらに行くと、既に親子の足跡があった。小さな手形もあった。あか子のよりは大きい。ふたり手をつないで隅から隅まで歩くと、わたしたちの足跡も残った。
スーパーのパン屋さんでいくつかお昼に買った。あか子はさっき家出る前に食べたばっかりだったけど、こうして親子で散歩の途中に食べるパンなんていうのもなかなか素敵に思えて、角の飲食コーナーで一緒に食べた。
帰りは別の道を通って帰った。ところどころで雪かきの音がする。陽のあたらない道は全面的に凍っていて、あか子は何度も滑りそうになった。その度に手をぎゅっとつかんだり、手をつなぎたがらない時はフードを持ち上げて転ばないように手を貸した。
「おうちに帰ったらあんよ温めようね」と声を掛けながら、家に到着。靴の中が水浸しで足が赤くなってるだろうと思ったけれど、そこまでびしょ濡れではなかった。服を着替えさせて裸足の足を両手でこすってやる。今日の散歩コース、悪くなかったね。今度また行こうか。